帰ってきた・生き残りのファイナンス~MBAでは分からないカネの話~

フジテレビ系列で全国放送されている国民的長寿アニメ「サザエさん」では、劇中に古き良き昭和的家族とでもいうべき磯野家が描かれています。

そんな磯野家における一家の大黒柱と言えば、山川商事に勤務する古き良き昭和的頑固おやじ磯野波平です。

近年は家族に対してどことなく及び腰の良くも悪くも民主的なお父さんが増えているとも言いますが、この作品では昭和的頑固おやじ波平が、家族に対して叱るべき時には「バカモ~ン!」、「けしからん!」、「いい加減にせんか!」などと、しっかりと叱る姿が描かれています。

そんな一家の大黒柱の波平を、フネ、カツオ、ワカメは「お父さん」、マスオは「お義父さん」、サザエは「父さん」、タラオは「お祖父ちゃん」、ノリスケは「伯父さん」と呼び、慕っています。

しかし、頼れる磯野家父さん波平には、意外な嫌いなものが設定されているのだといいます。

その波平嫌いなものとは「税務署」なのだそうです。

サザエさん」における磯野波平でなくとも、中小・ベンチャー経営の世界における経営者の中にも、「税務署」を苦手とする方は多数おられるのではないでしょうか?

特に、様々な見込みが外れて弱気になり、ついつい「父さん、倒産しそうだ!」というようなダジャレを家族に言いたくなるような状態に陥った経営者なら、なおの事「税務署」に対する苦手意識が高まっているのではないかと思います。

MBA(経営学修士)を授与する一般的なビジネススクールでは、実効税率や、負債や減価償却によるタックスシールドなどについては教えても、いざ危なくなった場合に登場する可能性がある税務署や年金事務所の徴収職員との交渉については教えてすらいません。

しかしながら、5年後の生存率15%未満、10年後の生存率7%未満、20年後の生存率は1%未満という起業の現実が待っている以上は、中小・ベンチャー経営の世界に身を置く限り、食うに困って公租公課を滞納した場合に備えた学びが必要です。

それでは、実際問題として、公租公課滞納するとどのような事が起こるのでしょうか?そして、公租公課滞納は、家賃などの滞納とどう違うのでしょうか?

結論から言うと、国税、地方税、社会保険料などの公租公課の滞納は絶対にやってはなりません。

もちろん法律で定められた当たり前の事だからというのが第一の理由ですが、それだけではなく、ファイナンスの観点からも全くもってお勧めできません。

確かに、延滞税や延滞金のレートだけを考えると、ノンバンクの無担保の借り入れなどよりも有利な場合があり、お金を借りてでも処理しようという気持ちが起こりにくいとお考えの方もおられることでしょう。

しかも、かつては年利14.6%だった延滞税や延滞金のレートが、近年は軽減され、法定納期限を過ぎても暫くの間は3%内外、それを過ぎても9%内外延滞税や延滞金が課されるに過ぎなくなったのですから尚更です。

実際の差押はこういう札を貼るわけではなく、例えば預金口座の残高を差押する場合なら、「債権差押通知書」を銀行などに配達証明郵便で送達させるなどにより執行します。

そのため、一見すると、仮に公租公課滞納したとしても、経済的な影響は大きくないと思えてしまうのです。

しかし、その考えは甘いのです。実は、このレートからは見えてこない、羊の皮を被った狼のような、極めて恐ろしいリスク公租公課滞納には潜んでいるのです。

その極めて恐ろしいリスクとは、徴収職員による「滞納処分」の執行です。

徴収職員というのは、平たく言うと、税務署年金事務所などの税や社会保険料の徴収を行う担当者のことです。しかしながら、彼らは単なる取り立て係などではなく、その権限は非常に強力なのです。

その非常に強力徴収職員の権限とは、質問検査捜索、そして、差押です。

あなたが、仮に家賃を滞納し、大家さんと揉めたとしても、民間人である大家さんがいきなり差押を執行するようなことは絶対にできません。大家さんの言い分がどれだけ正しかろうとも、裁判所強制執行を申立てて、執行官差押を執行してもらう必要があるのです。

ところが、あなたが、仮に公租公課滞納した場合は、徴収職員は裁判所を介することなく、自力で差押を執行できるのです。

しかも、恐ろしいことに、この徴収職員差押は権利ではなく義務だというのですから驚かされます。

言い換えると、徴収職員は差押をしなければならないのであり、あなたが公租公課滞納している限り、いつ徴収職員にその差押という義務を履行されても文句は言えないと言うことです。

また、あなたが公租公課滞納すると、徴収職員質問検査権を行使して、取引している可能性がある金融機関や企業などに対して、あなたの財産や取引の状況に関する情報収集を行います。

つまり、この段階で金融機関や取引先の企業などに、あなたの公租公課の滞納がバレるということです。

もし、あなたの取引先が全て同じ穴のムジナなら、さらっと流してくれるのかも知れませんが、少なくとも銀行などの金融機関はそうは行かないのではないでしょうか?

徴収職員が差押を執行しなければならない事についての詳細は、国税徴収法第47条をご確認ください!

公租公課を滞納したら、後回しにせずに、まずはお金をかき集めて速やかに納付するとともに、徴収職員に正直に事情の説明などを行い、解決に向けて指示をあおぎましょう!

そして、もっと恐ろしいのが捜索です。あなたの会社の営業時間内に、税務署年金事務所徴収職員が無予告で現れ、会社内を調べるのです。その際、現金などがあれば、その場で差押が執行されます。

この捜索が行われた時点で、従業員にもあなたの公租公課の滞納がバレます。あなたの滞納が、仮に従業員の給料から徴収している源泉徴収税や社会保険料であるとして、その事実を知った従業員は、どのような行動を起こすでしょうか?この辺はある程度、想像がつくかと思います。

確かに、現行の延滞税や延滞金のレートはそうでもありません。だからと言って、公租公課滞納の解消を後回しにすることは、同時に、徴収職員による「滞納処分」を受けるリスクを選択すると言うことでもあるのです。

取引先の開拓や、人材の獲得・戦力化にも投資が必要だったはずです。そして、その投資には金融機関に対する信用が大切であったはずです。

公租公課滞納を甘く見ると、今までの投資や努力が全て消し飛ぶくらいの痛手を負う可能性があるのだと言うことを肝に命じていただきたいと思います。

経営が傾いても、公租公課の滞納だけは、回避することを当サイトではお勧めします。

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