バスケは5人、野球は9人、サッカーは11人・・・。同時に試合に出る人数はそれぞれの競技ごとに制限があります。
しかしながら、スポーツのチームは試合に出ている選手だけで出来ているのではありません。控えの選手やコーチなどを入れると、実際には、もっと大勢で一つのチームが出来ています。
1人で戦うボクシングなどであっても、実際にはセコンドや日々のトレーニングで共に汗を流す仲間がいて初めて選手が試合に臨むことができるのです。
人生の楽しみの一つ・スポーツには、仕事にも通じる学びがあります。それは、チームワークの大切さです。
サッカーのゴールキーパーが一人だけ活躍しても、それだけでは試合に勝つことができません。フォワードやミッドフィルダーなど、それぞれの役割の仲間たちが、持ち味を発揮してチームに貢献しなければ勝利は掴めないのです。
これまでの人生を振り返ると、仕事のできる方々の中に、組織の仕事をまるで自分だけが回しているかのような仰り方をする方がいました。
しかし、その方の活躍は、実際には大勢の仲間(チーム)に支えられていたのです。
このコラムをお読みの方に限ってそのようなことは無いと思いますが、もし、あなたが「自分は優秀だ」とか「この組織は自分の力で持っている」などと思い始めたら、ぜひ、スポーツに取り組んでいただきたいと思います。スポーツと仕事の往復により、チームワークの大切さを体で学ぶことで、職業人として更に成長することが出来るでしょう。
さて、チームワークというと、40年以上にわたって続いている東映のスーパー戦隊シリーズという男児向けの特撮テレビ番組があります。
多くのこの手の男児向けヒーロー物は、主人公の仮面ライダーやウルトラマンなどの正義の味方が、世界征服を目論む秘密結社や怪獣などの悪と1人で戦う作品が多いのですが、スーパー戦隊シリーズは、歌舞伎の「白波五人男」の如く、主人公(ヒーロー)がチームであることに特色があります。
具体的には、「秘密戦隊ゴレンジャー」は5人、「ジャッカー電撃隊」は4人、そして「太陽戦隊サンバルカン」は3人というように、彼らは悪と戦うヒーローでありながら、1人で戦うのではなく、3~5名程度のチームで悪を倒し、平和を守るのです。
これって、会社に似ているとは思いませんでしょうか?ただし、会社の場合は悪を倒すのではなく、チームワークでお客様の満足を勝ち取ります。
また、スーパー戦隊においては、各メンバーのコスチュームの色によって大方の役割や個性が表現されているのです。
例えば、赤はリーダー、青はサブリーダー、桃色は紅一点で、黄色はカレー好きなどです。
各メンバーの異なる個性(カラー)を束にして、各自が果たすべき役割をはっきりさせることにより、強大な悪と戦う力を最大化している点でも、スーパー戦隊は会社に似ているといえるでしょう。
スーパー戦隊のように、レッド、ブルーなどと色分けされている訳ではありませんが、チームの力と役割の力によって、成果を上げている企業が北関東にあります。それは和食ファミリーレストランなどを展開する坂東太郎です。
大きな会社ではなく、いい会社を志す坂東太郎では、働く⼈を家族と考え、パートをパートではなく「ファミリーさん」と呼ぶそうです。その上で、「ファミリーさん」の中から、「女将さん」と「花子さん」を任命するのだそうです。
正社員が数年で異動しても、「ファミリーさん」として働く⼥性たちの中には、家庭を持つ主婦も多く、長い年月を同じ店で過ごす人がいるのです。その為、彼女たちは、子育てなどの人生経験に加えて、正社員以上に地域のお客様を熟知しているという個性を持っているのです。
その個性を活かすべく「女将さん」を任命し、お客様の出迎えや⾒送りなどの接客やスタッフのマネジメントなどといった、まさに「女将さん」の役割を担ってもらうのです。
ちなみに「花⼦さん」はというと「女将さん」不在時にその役割を担うサブリーダー的位置づけとのことです。
「秘密戦隊ゴレンジャー」にたとえると、「女将さん」がアカレンジャーで、「花⼦さん」がアオレンジャーというところですね。
パートって言われるより、家族扱いをしてもらった上で、「女将さん」って言われたほうがやる気だって出ます。簡単なことなのですが、実は大きな違いがあります。
ちなみにマズローは5段階の上に、更に「自己超越」という段階があると考えていたそうですよ!
こうして役割を与えられた「ファミリーさん」は、他社で言うところのパートと同等の位置づけであるにも関わらず「女将さん」や「花子さん」として持てる力を発揮して、お客様の満足を勝ち取る原動力になっているのです。
つまり、パートと呼べばパートにしかならない人材が、「女将さん」と呼べば、それによって本当に「女将さん」になるということです。
この「女将さん花子さん」方式は、有名なマズローの欲求5段階説に照らして考えると、非常に理にかなったやり方であることがよく分かります。
「いい仕事をして、お客様を満足させたい」と思うことって、この5段階だと、どの欲求になるとお考えでしょう?
一番上の「自己実現欲求」こそが、その欲求なのですが、ここにたどり着くためには、それよりも下の「帰属欲求」や「承認欲求」が十分に満たされる必要があるのです。
日本に暮らす人材は、生きるための基本的な欲求の「生理的欲求」や、次の「安全欲求」は、殆どの場合、満たされているのですから、「帰属欲求」や「承認欲求」を如何に満たすかがカギになるのです。
もうお分かりですね?
「ファミリーさん」としての家族扱いは、人材の「帰属欲求」を満たし、「女将さん」や「花子さん」という役割の付与は、人材の「承認欲求」を満たす効果があるのです。
だからこそ、「女将さん」として、お客様を満足させる創造的な仕事を果たしたいという最上位の「自己実現欲求」に火が付き、他社でいうところパートが顧客満足を引き出す重要な戦力になるのです。
会社内部での競争や危機意識を必要以上に煽っても、「仕事だからやるのが当然だ」、「カネをやるから結果を出せ」というようなやり方を取っても、人材の「自己実現欲求」に火は付かないのです。
チームとしての一体感の醸成、そして、役割の付与が人材を作り、お客様の満足を創造する原動力になると言えるでしょう。
マズローの説に軸足を置くと、このイラストのような手法の人事施策には、疑問符が付きます。
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